笑顔の裏側に
呼吸がいくらか落ち着いてきたところで、棚にあった体温計に手を伸ばして先生に手渡す。

先生はもう大丈夫と言って受け取らなかったので、スイッチを入れて無理やり押し付けたら、渋々ながら計ってくれた。

「あ、そういえば、愛ねえがお前によろしくって言ってたぞ。」

体温計が鳴るのを待っている間、思い出したように先生が言う。

「愛お姉ちゃん、いつ頃お帰りになったんですか?」

「うーん、よく覚えてないけど、12時は回ってたと思う。」

日付超えちゃったんだ。

私ったらあんなにお世話になったのに挨拶もせずに失礼すぎる。

あとでメールでもしておこう。

ちょうど体温計が鳴る音が聞こえて、私も覗き込む。

「見ろ、完全復活だ。」

ドヤ顔で差し出してくる体温計には、36.1度の表示が。

それにホッと胸を撫で下ろし、

「では、朝食の準備をしてきますね。」

一言断って、寝室を出た。

サッと身支度を行い、朝食の準備に取り掛かる。

と言っても昨日作っておいた野菜のおじやがあるので、それを温め直せば良いだけだ。

暖かいお茶も入れようと、やかんでお湯も沸かす。

テーブルにちょうど並べ終わると同時に、先生が部屋に入ってくる。
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