笑顔の裏側に
そのまま踵を返して散らかったリビングを片付け始める。

「いいから、私がやるからそのままにしておいて。」

慌てて止めるけど、

「体痛むんだろ?お前はソファーで座っとけ。」

その言葉を無視して私も片付け始める。

「たっく。座っとけって言ってるのに。」

そう言いながらもそれ以上は何も言ってこなかった。

私は体を庇いながらのため、全然進まず、悠がほとんどやってくれた。

「ごめんね、こんなことまでやらせて‥。」

「もう謝るなよ。お前のためにできることがあって俺は嬉しい。それより痛むのは足だけか?」

その言葉にドキリと心臓が嫌な音を立てた。

ワンテンポくらい遅れてしまったが、平然と返す。

「うん、あとは大丈夫。」

「他にもどこか痛いんだな。どこだよ?」

嘘を見透かされ、思わず俯いた。

というか私、今までずっとこんな見え透いた嘘をついてきたんだ。

何かとりあえず恥ずかしすぎる。

馬鹿みたいじゃん、私。

「何年一緒にいると思ってんだ。幼馴染を舐めんなよ。」

顔を覗き込まれ、なぜか自慢気に言われる。

「お腹‥。」

「腹?」

ゆっくりと頷いた。

「腹のどこ?全部?」

「多分肋骨にヒビが入ってると思う。」

もう観念して全てを吐き出してしまった。

「そんなに!?いつも、その、そこまでひどいのか?」

「まあ今回は特別。でもコルセット巻いてるし、痛み止めも飲んでるから今はだいぶマシになった。」

「痛かっただろ?良く頑張ったな。」

そう言って悠がそっと患部に触れた。
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