笑顔の裏側に
その優しい言葉に、温かい手に再び涙が流れた。

その一粒が悠の優しい手に落ちた。

その手は今度は私の背中に回される。

「今は何も考えずに泣け。俺がずっとそばにいてやるから。」

その言葉を聞いて、迷わず悠の胸に飛び込んだ。

声を上げて、ただひたすら泣く。

悠の腕の中はすごく心地よくて。

暖かくて優しくて。

私の弱った心をますます弱らせた。

一頻り泣いた後、顔を悠の胸元から離した。

「ごめんね、ありがとう。」

顔を見れずに悠の服の印字を見つめる。

「俺はやっとお前の泣ける場所になれたな。」

大きな手で頭を撫でられる。

止まったはずの涙がまた溢れそうになった。

悠が優しすぎて。

いつも優しいけど、今日はいつも以上に優しい気がする。

ずっと私を一番近くで見守っていてくれていたことに今更ながらに実感する。

私が落ち着いたのを見計らって、

「先生は知ってるのか?」

「言ってないけど、多分薄々気づいてると思う。」

「そうか‥。」

それっきり悠は何かを考え込むように黙ってしまった。

沈黙が怖くないのは、それだけ一緒に過ごしてきた証だ。

悠は私にとってかけがえのない存在で。

私以上に私のことをきっと分かっていると思う。

こんなにも近くに私のことを支えてくれる人がいたのに。

私はこんなにも見守ってくれる存在にさえ心を閉ざして、自分の守るための鎧で何重にも覆っていた。

「先生に言えないことも俺にだけはちゃんと言えよ。絶対に1人で我慢するな。お前が助けを求めるなら、何処にだって飛んでいくから。」

「何かそれじゃあ、悠が私の彼氏みたいじゃない。」

言葉にできないほど嬉しくて。

だけど照れ臭くて歯痒くて。

それを誤魔化すようにはぐらかした。
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