笑顔の裏側に
「じゃあ、本当に俺が彼氏になってあげようか?」

「え?」

思わず悠の顔を見れば、その瞳は真剣で、本気にしてしまう。

「何てな。冗談だよ。」

まるで止まった時間を動かすように、息を一気に吐き出して、固まる私に告げる。

「本気にした?」

「もうからかわないで。」

そう言って悠の腕を叩く。

「でも半分本気だよ。」

「え‥」

小さく零した言葉が私の耳に届いた。

その声はあまりにも切なげで、私の胸を締め付ける。

でも私を見た悠の表情はいつも通りだった。

「お前、こないだ木下に呼び出されてただろう?」

一瞬、切なく見えたのは、私の気のせいなんだろうか?

「あ、うん。」

そのことばかりが気になって、悠の話をあまり聞いてなかったが、とりあえず相槌を打つ。

「木下、お前と先生の関係疑ってたな。」

「うんって、何でそこまで知ってるの?」

あの場には私と木下さんしかいなかったはず。

それなのにどうして悠が知ってるの?

「だって俺、後付けてたし。」

平然と告げられて言葉を失う。

そんな当然でしょ?みたいな顔してるけど、間違ってるから。

普通、そんな簡単に後付けたりしないから。

心の中で突っ込みを入れるが、口には出さない。

悠の話の先が消えない今、余計なことで話をややこしくしないのが賢明だ。
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