笑顔の裏側に
荷物を乱暴に手にして、逃げるように準備室を出た。

ただ無心で屋上に走った。

ドアノブを回せば鍵は閉まってて。

そのまま崩れ落ちるように座り込む。

そしてポケットから携帯を取り出した。

ある人の名前を見つけて、迷わず電話をかけた。

「優美?どうした?」

「悠‥」

いつも通りの優しい声に安心感を覚え、ますます涙が溢れた。

「泣いてるのか!?今どこ?」

「屋上の‥

「今すぐ行くから!絶対そこにいろよ!」

一方的に電話を切られ、力無く腕を落とす。

真っ暗な画面に滴が落ちた。

そのまま無造作にポケットに突っ込む。

涙は止まることを知らないかのように、次々とスカートに染を作っていく。

下の方から、バタバタと階段を昇る音が聞こえてきた。

それは次第に近づいてきて、乱れた息遣いまで聞こえてくる。

「優美!」

振り向けば、階段を挟んだ踊り場で肩で息をしながら、こちらを見上げている悠の姿があった。

勢いよく階段を昇ってくる。

屋上の扉の前まで来た瞬間、悠の胸に飛び込んだ。

ただただ泣き噦る。

まだ胸の中にある想いが、涙となって溢れ出した。

このまま涙がこの想いを綺麗さっぱり洗い流してくれればいいのに。

「悠‥私ね‥振られちゃった‥」

「え?」

そんな声とともに、私の背中を撫でていた手が止まった。

「元の‥関‥係に‥戻ろう‥って‥」

少し収まってきていた涙が再び溢れた。

「ねえ、悠‥。私の何がいけなかったのかな?知らないうちに何かしちゃったのかな?」

黙ったままの悠にまるで詰め寄るように言う。

「隠し事が多いところ?計算高いところ?すぐに‥

取り乱した私の唇に柔らかいものが触れた。
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