笑顔の裏側に
「それ以上、自分を傷つけるな。」

声にならない嗚咽が漏れた。

「俺にしとけよ。好きだ、優美。」

肩を寄せられて、抱きしめられた。

「俺ならこんな風に泣かせたりしない。お前のいいところもダメなところも全部知ってる。それで
もお前の全てを愛せる自信が俺にはある。」

耳元で力強い言葉が聞こえた。

その言葉に縋るように、私は悠の背中に手を回し、ただ甘えることしかできなかった。

悠を好きになれたらどれだけ幸せだろう。

こんな私を好きって言ってくれる人がいるのに。

私の全てを知っても愛してくれる人なのに。

それでも私は先生が好きで。

その言葉を先生から聞きたかったと思ってしまう最低な自分がいる。

最終下校のチャイムが鳴った。

もう帰るか、自習室に行かなければならない時間。

こんなところに人は来ないだろうけど、いつまでもこうしているわけにはいかない。

私は悠の背中から手を離した。

すると悠もゆっくりと私を離してくれた。

「もう、帰ろう。」

優しく頭を撫でて、立ち上がる。

私もそれに倣った。

帰り道、悠が何かを話していた気がするけど、うわの空で何も覚えていない。

それを悠も感じ取っていたと思う。

気づいたら家の門の前まで着いていて、慌てて悠と向き合った。

「今日は本当にありがとう。」

「いいや。俺を一番に頼ってくれて嬉しかった。」

それっきりお互いに無言になってしまった。
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