笑顔の裏側に
「じゃあまた明日ね。」

門に手をかけようとすると、もう片方の手首を掴まれた。

「弱ってる心に付け入るように、あんなこと言うのは間違ってるって分かってる。だけど俺本気だから。お前の気持ちの整理が着くまでずっと待ってる。だから今まで通りそばにいさせてほしい。」

その言葉にゆっくりと振り返った。

ああ、私はどうしてこうも自分のことしか考えられないのだろう。

悠が不安じゃないわけない。

相手の気持ちが見えないことがどれだけ不安か、私だってちゃんと知っているはずなのに。

こんなんだから先生に愛想尽かされちゃうのかな。

「そんなことまで言わせてごめん。悠の気持ち、すごく嬉しかった。もちろん今の言葉も。でも私は‥」

「分かってる。俺はいくらでも待つから。それでもお前が心から俺じゃないやつを想うなら、そいつを選んでも構わない。だけど、もし俺に少しでも望みがあるのなら、その時は俺と付き合ってほしい。お前を必ず振り向かせてみせるから。」

真っ直ぐに想いを伝えてくれる悠に胸が痛かった。

真剣な瞳や言葉を選びながら話す話し方からも決意の強さが感じられる。

だから私もちゃんと伝えないといけない。

「ありがとう、こんなにも私のことを想ってくれて。私の気持ちを一番に優先してくれて。だから私は悠の気持ちを大切にしたいと思う。」

私も真っ直ぐ悠を見据える。

悠の手を今度は私から取った。
< 319 / 518 >

この作品をシェア

pagetop