笑顔の裏側に
何よりそれに気づけない自分が一番許せなかった。

もっと俺を頼って、辛いこともちゃんと俺に話してほしいのに。

優美が安心して頼れるのは。

本音を吐き出せるのはーーー。

神谷なんだ。

そんなのは頭では分かっていた。

神谷の方が優美と一緒にいる年月も長い。

俺とは違って人目を気にせず、いつでもそばにいられる。

優美に変わった様子があれば、注意深く見てやることもできる。

でも目の前でその現実を突きつけられて。

自分の無力さを痛感して。

優美を大切にできてない自分に失望して。

やっぱり神谷が優美に相応しいのだと嫌でも感じてしまう。

だからこそ、俺はあの決断を下した。

俺が離れれば、神谷は傷ついた優美を支えるはずだ。

きっと神谷なら優美を幸せにしてやれる。

胸の内に抑え込んだ感情も全て汲み取って、寄り添うことができるだろう。

守ってもらってばかりで、何一つしてやれなかった俺が、優美のためにできる最初で最後のことだと思った。
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