笑顔の裏側に
「自分のせいで優美を傷つけたから、別れを選んだってことかよ?」

「ああ。」

「ふざけんじゃねえ!優美の気持ちはどうなるんだよ!あんたを想って必死に隠して、あんたとの関係を必死に守ろうとしている優美の気持ちは!」

まるで俺を責めるように、神谷は睨みつけていた。

「それが分かってるから、離れたんだ。俺じゃあ、優美を守ってやれない。幸せにしてやれない。」

静かにそう言えば、今度は呆れたように言葉を吐き捨てた。

「その程度だったってことかよ。あんたは優美が話してくれないことを言い訳に、何もできない自分から逃げてるだけだろうが!」

その言葉に今まで抑えていた何かが切れた気がした。

「お前に何が分かるんだよ!優美に頼られて!何でも話してもらえて!ずっとそばにいられて!俺が何一つできないことができるお前が分かったようなこと言うなよ!」

こんなの逆ギレだってことは分かっていた。

神谷に嫉妬して。

悔しさや憤りをぶつけて。

「俺がここまで来るのにどれくらいかかったか教えてやるよ。6年だよ、6年。話してくれるようになったのだって、最近だ。それくらい優美は本当の意味で心を開かない。だからこっちが気づいてやらないといけない。しっかり見ててあげないといけない。待ってるだけじゃダメなんだよ。」

諭すように言われて、怒鳴り散らした自分が恥ずかしく思えた。
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