笑顔の裏側に
みんなのような気分にはとてもじゃないけどなれなかった。

ただもう先生に会えないという現実が私の心に重くのしかかる。

それに比例するように重い足取りで階段を降りていれば、

「優美。」

後ろから声を掛けられ、勢いよく振り向いた。

だけどその期待は呆気なく散った。

一緒に歩む未来はないとあんなにも断言されたのに、まだ期待している自分に泣きたくなった。

私を心配して、こうして追いかけてくれた悠にだって申し訳なさすぎる。

悠だってみんなと過ごしたいはずなのに。

「先に帰るね。私なら大丈夫だから。悠はみんなとちゃんとお別れしてきて。」

俯きそうになるのを堪えて、ちゃんと瞳を見据えて言う。

私のせいで悠の大切な時間を邪魔したくない。

「それなら俺ももう終わったから。」

「でも‥」

私の声に重ねるようにして悠は続ける。

「俺にお前と過ごす時間より大切なものはない。みんなには会おうと思えばいつでも会える。たとえ最後だったとしても、それでも俺はお前と一緒にいたいんだ。お前がいるなら俺は他に何もいらない。」

真っ直ぐな言葉に我慢していた涙が零れ落ちた。

それを機にボロボロと大きな雫が床に落ちていく。

「ありがとう。」

そう言うのが精一杯で。

この時、本気で悠を好きになりたいと思った。

こんなにも私を想ってくれて、愛してくれて。

悠の気持ちにちゃんと応えたいと思った。

だから私はその気持ちを胸に刻むように、悠にギュッと抱きついた。
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