笑顔の裏側に
私は溢れ出した涙を袖で拭ってすぐに立ち上がった。

悠のいる中庭まで必死に走る。

涙でグシャグシャな顔だったけど、どうでもよかった。

今すぐ会って伝えたい。

そして中庭のベンチで桜の木を眺めている悠を見つけた瞬間、

「悠!」

ありったけの想いを込めて名前を呼んだ。

すると驚いたようにこちらに視線を向けていて。

私は飛び込むような勢いで、ベンチの前まで走った。

息を整えながら真っ直ぐ悠を見つめる。

その間も悠は何も聞かずに私の涙を拭ってくれていて。

その優しさに涙が再び溢れて止まらなくなるけど、伝えたい想いが強すぎてどうしようもなくなる。

だから涙ながらに伝えることにした。

「悠。」

名前を呼べば、頰に触れていた手が止まった。

「今までずっとそばにいてくれてありがとう。支えてくれてありがとう。ずっと待っていてくれてありがとう。いくら伝えても足りないくらい、本当に悠にはありがとうの気持ちしかない。感謝してもしきれない。」

言いたいことはまだまだあるはずなのに言葉が出てこない。

大きく息を吸って伝えたいことを伝えることにした。

まだ間に合うだろうか。

そんな不安がよぎるけど、今度は私が勇気を出す番だから。

「悠がいてくれたからここまでこれた。ちゃんと先生とも向き合ってさよならできた。ありがとう。」

「よく頑張ったな。」

頭を撫でられ、またしても涙が零れ落ちる。

それでもまだ一番大切なことを伝えてないから。
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