笑顔の裏側に
結局私は。

たった今捨てられたんだ。

これからの生活と引き換えに。

欲しかったものは新しい部屋でも家具でも通帳でもない。

ましてやT大医学部という学歴でもない。

ただ少しでもいいから私を認めて欲しかった。

それだけなのに。

一番欲しかったものは私の願望として呆気なく消え去ってしまった。

それと同じように私も消えてしまいたい。

そう思ったら、体はあんなに力が入らなかったはずなのに、スッと立ち上がる。

そのままふらふらと洗面所に向かい、カミソリを手にした。

そして自分の左手首に当てようとした。

しかし手が震えてうまくは当てられない。

結局震えてブレた刃が手のひらに当たって少しだけ切れた。

ズキリとした鋭い痛みが一瞬走る。

それを機にカミソリは洗面台に落下した。

そしてズルズルと洗面所に座り込む。

結局怖くてできなかった。

死んでしまいたいと思ってたはずなのに、いざ死ぬとなるとガタガタと大げさなほど震えてしまう。

何をやっているんだろう。

私は何がしたいのだろう。

弱い自分に心底嫌気がさした時。

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