笑顔の裏側に
一般的な1LDKの部屋。

そのはずなのに、なぜか虚しさが込み上げてきて。

本当にここで1人で暮らすんだと思ったら、一気に孤独が押し寄せた。

「なあ、ここに泊まりに来てもいいか?」

そんな優しい声が隣から聞こえてきて。

縋るように大きく頷いていた。

それから近くにある大型ショッピングセンターで必要なものを揃える。

机や棚から選んでいく。

持って帰れないため、郵送にしてもらった。

そして最後に食器や調理器具のコーナーにやってきた。

フライパンと鍋、包丁、まな板など調理器具の一式をカゴに入れ、食器を見て行く。

マグカップのコーナーで1つの商品に目が止まった。

黒猫と白猫のイラストが入っていて、セットの商品だった。

取っ手を重ねると尻尾がハートの形で絡まるようになっていて。

向かい合わせで並べると寄り添うような絵になる。

「ねえ、悠。お揃いにしたい。」

重たいであろうカゴを持って、隣で他のコップを見ていた悠に声をかける。

こちらを見た悠に商品を指さして伝える。

「いいじゃん。カップルぽい。あ、俺は黒猫の方な。」

「黒猫の方が好きなの?」

ペアカップを丁寧にカゴに入れながら、尋ねる。

「黒猫の方が凛々しいだろ?か弱い白猫を守れるように。」

「そう。よく分かんないけど、まあいっか。とりあえず悠は黒猫がいいのね。」

「あ、おい。今ちょっと大事なセリフだっただろ!?」

後ろでごちゃごちゃ言っている悠を放って、お茶碗を選ぶ。

そしてレジに並んで会計を済ませた。
< 355 / 518 >

この作品をシェア

pagetop