笑顔の裏側に
そして少しずつ大学にも慣れて、ゴールデンウィークの最後の日。

いきなり大荷物で悠が家に訪ねてきた。

「今日から平日はお前の所に泊まるな。お世話になります。」

言われている意味が分からず立ち尽くしてしまう。

そんな私の横を通り過ぎて、悠はズカズカと部屋の中に入っていく。

慌てて後を追って、問いかける。

「ちょっと待って!ちゃんと美沙さんたちには言ったの?」

美沙さんとは悠のお母さんだ。

とても綺麗で優しい人だ。

「言ったよ。忙しくて通学時間も惜しいくらいって言ったら、あっさり許してくれた。その代わり週末は帰ってくることが条件だけど。」

展開が早すぎて理解が追いついていかない。

何も言わない私をチラッと見て、再び口を開いた。

「食費は全部俺が出すから。母さんにもそう言われてるし。」

「迷惑だったらすぐに帰るから。試しに1週間だ

「そうじゃなくて!」

どんどん話を進めていく悠に思わず遮った。

沈黙が流れた。

深呼吸を繰り返して、頭を整理する。

「迷惑なんて全然思ってない。ちょっと驚いただけ。いくつか聞いてもいい?」

悠が返事をして荷物を置いたのを見て、ソファーに座るように促す。

そして向き合うように座った。
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