笑顔の裏側に
「これ、睡眠薬だよな?こんなの飲んでて、どこが大丈夫なんだよ。」

突きつけられたものは薬のPTP包装シートだった。

私が飲んで捨てた後の空のもの。

いつの間にゴミ箱から取り出したのだろう。

「だって仕方ないじゃない!眠れなかったら、体も辛いし、悠にだって心配かけちゃう!これ以上私のせいで負担なんてかけたくないの!」

こんなの八つ当たりだ。

思うようにならない自分の心身に苛立って。

それを心配してくれる悠にぶつけて。

そんな最低な私を許すように優しく抱き締められた。

「負担だなんて思ったこと一度もない。俺がお前のそばにいたいんだ。」

「そんなの嘘‥。」

「嘘じゃない。確かに今のお前は心配だ。ほっとくことなんてできない。」

「やっぱり迷惑なん

「支えたいんだ。」

私の言葉は遮られ、さっきよりきつく抱き締められた。

咄嗟に口を噤む。

「誰よりも一番近くで、お前を支えたい。俺はずっとそれだけを考えてる。迷惑や負担なんて一切感じてない。むしろそれだけ俺に心を許してくれてるってことだろ?だからお前はそのままでいいんだ。俺の前で無理にする必要も強がる必要もない。」

「ごめ‥ん、私‥」

胸の奥にいろんな感情が広がって、いっぱいになって何も言えなくなった。

私が気にしていることを全部、取り除いてくれて。

その上で、こんなに弱くてダメな私でもいいと言ってくれる。

ありのままの私を優しさで包んでくれる。

「もう、いいだろう?一緒に住ませてくれよ。」

陽だまりのような微笑みを浮かべて問いかける悠に、大きく頷いた。
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