笑顔の裏側に
そんな風に勉強とバイトを両立しながら過ごしていたある日の木曜日。

その日は最後の1コマが休講で、私のバイトもなくなり、放課後は彩花と舞、美憂で映画を見ることになっていた。

今話題の恋愛映画。

主演の男の子がカッコいいとか、相手役の女の子は演技が上手くて期待の新人だとか盛り上がっていたけど、私にはよく分からない。

つくづく勉強以外本当に何にもしてこなかったなと実感した。

そして飲み物とポップコーンを買って、席に着く。

案外すぐに始まり、ポップコーンを食べながらスクリーンを見つめる。

最初こそぼんやりと見つめていたものの、ラストに近づくにつれて、真剣に見入っていた。

もちろん最後は2人がくっついてハッピーエンド。

エンドロールで映画のワンシーンが流れて、それがよく主題歌に合っていた。

そして舞と美憂と別れて、彩花と同じ電車に乗る。

舞と美憂は実家から通っていて、彩花は私と同じく1人暮らし。

電車に乗った時に、悠にこれから帰ることと連絡した。

彩花とは映画の話で盛り上がり、あっという間に駅に着いて電車を降りる。

すると改札口の真正面にあるコンビニの前に立っている悠の姿が見えた。

改札を出る私に気づいて、悠がこっちに向かってくる。

「おかえり。」

「ただいま。ありがとう。」

そんなやりとりをしていると、隣に来た彩花がにんまりと笑って言う。

「ホント、仲がいいことで。じゃあ私は帰るから。また明日、詳しく聞かせてよね!」

さっさと出口に向かってしまう彩花に慌てて手を振る。

私たちも反対側の出口へと歩き出した。

「映画、楽しかったか?」

今日見た映画の話をする。

出演者については、3人が言っていたことをそのまま使わせてもらった。

そして家に着き、電気をつける。

するといつもとは違う光景に立ち止まった。
< 376 / 518 >

この作品をシェア

pagetop