笑顔の裏側に
近くのスーパーに歩いて向かう。

その途中、母親とその娘であろう小さな女の子が手を繋いで前から歩いて来た。

母親の手にはスーパーの袋があるから、きっと帰り道だろう。

繋いだ手をぶんぶん振って、楽しそうな声が聞こえてくる。

その光景から思わず目を逸らした。

その親子とすれ違った後も、仲良さげな様子が頭にチラつき、弾んだ声が耳に残る。

それを振り切るように、歩く速度を上げた。

ピーマンを1袋買って、スーパーを出る。

買い物バックをぶら下げながら、さっきの光景に心を乱されている自分が情けなくなり、トボトボと帰り道を歩く。

その途中、顔に冷たさを感じて立ち止まった。

一瞬泣いているのかと思った。

だけど顔以外にも次々に冷たさを感じて、空を見上げる。

案の定、真っ暗な雲が広がっていて。

本降りになる前にと帰り道を急ぐ。

するといつもの分かれ道から見たことのあるような女性が出てくるのが微かに見えた。

長い髪を一つに束ねて、紺色の傘を持っている。

その人はそのまま真っ直ぐ歩いていて。

気づけば何かに突き動かされるかのように、走り出していた。
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