笑顔の裏側に

向き合う勇気

あれから3日間にも渡って熱に魘された。

ようやく熱が下がってもまだ咳が少し出ていている。

やはり夏風邪はしぶといらしい。

しかし悠に移すことなく、回復の兆しが見えてきたことに一先ず安心する。

家庭教師のバイトは1回休んでしまったものの、別日に振り返れば問題ないということで、大丈夫そうだ。

悠の長かった夏期講習は残り1日になり、忙しさは落ち着いてきたようだ。

カレンダーを見ればもう明日から9月。

もうすぐ悠の誕生日だ。

今年は何を上げようかなと考えながら、美憂に相談しようと連絡する。

するとすぐに連絡が来て明後日の午後、会うことになった。

美憂と会うのも久しぶりだ。

短期バイトのおかげで、予算にも余裕がある。

いつも迷惑ばっかりかけているお詫びとお礼として、ちょっと奮発しよう。

そんなことを考えていると、悠が帰ってきた。

昼食を食べながら、早速、明後日のことを伝える。

「大丈夫か?まだ風邪だって治ってないのに‥。」

「大丈夫。久しぶりに気分転換もしたいし。」

そう言えば渋々了承してくれた。

あの日以来、悠はなるべく私1人で出かけることがないように気を遣ってくれていた。

スーパーへの買い物も、行ける日は一緒に行ってくれるようになった。

私が熱を出した時に何をどうしたらいいか分からなかったから、今後のために俺も少し勉強しないととか何とか言って。

そんなのどうせ口実だろう。

断っても付いてきてしまうからどうしようもなく、何も言わずに行って心配かけるよりはとそのまま悠に甘えていた。

だけどそれじゃあダメだと思うから。

少しずつ1人で出かける機会を増やして、悠にも大丈夫だと認めてもらわないと。

今回ばかりは付いてこないだろうから。

そのためにも行き先は告げなかった。
< 399 / 518 >

この作品をシェア

pagetop