笑顔の裏側に
第8章 手放したくない笑顔

伝わらない恋心

そして私はまたマンションでの生活に戻った。

マンションまでの帰り道、夜のことを話すと、悠は自分のことのように喜んでくれ、安心したように頭を撫でてくれた。

感謝の言葉を伝えても、お前が頑張ったからだの一点張りで、全然聞いてくれない。

何度も病院に通ってくれたとお母さんから聞いたと言えば、照れ臭そうにはぐらかしていた。

せめてものお礼をと思い、夕食は悠の好きなものをたくさん作った。

それからすぐに、大学の講義が始まり、また忙しい生活が戻ってきた。

だけど彩花や舞、美憂とほぼ毎日、約束なしに会えることは嬉しく思う。

予習復習、課題に追われる日々は辛いけれど、春学期で慣れてせいか、少しずつだけど要領が掴めてきた気がする。

そして何より少しずつ夜もぐっすり眠れるようになったきたと思う。

夜中に目を覚ます回数も減った。

それにより勉強の捗り具合も良くなったと思う。

充実していると思うものの、気がかりなことが1つだけあった。

悠が塾講師以外に、新たにカフェのバイトを始めたのだ。

理由を尋ねれば、友達のお兄さんに頼まれたからだそうだ。

友達のお兄さんが働いているカフェで1人辞めてしまい、人手不足で困っていたらしい。

懇願されて断れず、引き受けたとのこと。
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