笑顔の裏側に
それから約20分後に悠に声をかければ、やはりぐっすりは寝られなかったようで、すぐに返事が返ってきた。

悠の荷物を持って、一緒に教室を出る。

エレベーターの方が良いと思い、教室を出て目の前のあるエレベーターのボタンまで走った。

そうして実験室に着くと、悠が手を出したので、鞄を渡した。

実験室では決められた班によって席も指定されている。

そのため、悠の近くに居たくてもいられない。

小さくため息をつくと、すぐに先生が入ってきて授業が始まった。

実験が始まると、準備したり、変化を見たり、記録を取ったりと何かと忙しい。

チラッと悠の様子を見れば、いつもより気だるげな感じで一応実験に参加していた。

だけど咳が酷くなってきてるなと思いつつ、目の前の試験管の中身を軽く混ぜる。

そして講義が終わると、急いで悠の元に向かう。

悠の班はまだ片付けが終わっていないようだった。

しかし悠はというと、体力に限界がきたのか椅子に座って机に突っ伏している。

どんどん具合は悪くなっているに違いない。

悠の代わりに片付けを手伝い、悠の筆記具も鞄にしまう。

ガサガサとした音に気づいて顔を上げた悠の頰は少し赤いような気がする。

やっぱり熱が上がってきたようだ。
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