笑顔の裏側に
マスターが顔を出し、

「あと5分くらいでタクシーが来るよ。」

そう知らせてくれた。

「さっきの通路を店と反対側に進むと、裏口がある。俺がタクシーをそっちに回るように誘導して、着いたら裏口を開ける。寒いから中で待っててね。」

「お手数おかけして申し訳ありません。お心遣いいただき、ありがとうございます。」

やはりマスターに頼んで正解だった。

ここの立地をよく分かっているからこそできる判断だろう。

私じゃきっとうまく説明できないだろうから。

それから悠にロッカーの場所を聞き、荷物を取り出して、自分の荷物を持つ。

そして肩を貸して何とか悠を立たせて、裏口まで辿り着いた。

壁に寄りかかり、少しでも体を楽にする。

ここまで来るのに、2人してフラフラだ。

フラフラの悠を私が支えるのはとても大変だったが、幸い倒れずに済んだ。

これをマンションに着いた後、もう一回やるのかと思うと気が遠くなりそうだが、仕方がない。

数分後には、裏口が開き、マスターが悠を支えてタクシーに乗せてくれた。

私もマスターにお礼を言って後から乗り込んだ。

そして先ほどと同じように悠を支えて何とか部屋に辿り着く。

がしかし着いたことに安堵したのか、いきなり悠の力が抜けて崩れ落ちるように倒れるから、私も一緒に倒れ込んでしまう。
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