笑顔の裏側に

甘く切ない温度

しかし私の心配も束の間、悠は何事もなかったようにバイトに行った。

たぶん私の家庭教師のバイトがないからだと思う。

私はあの日の家庭教師が今年最後の日だった。

次は年明けてから。

だから私がカフェに行くこともないため、特に何も言ってこないのだと思う。

それから数日が経って、大学は冬休みに入った。

今日はクリスマスイブ。

朝早くから電車に乗って、有名なテーマパークへ向かう。

昨日の夜、いきなりチケットを渡されて。

慌てて準備して今に至る。

鞄の中にはいつでも渡せるようにプレゼントを忍ばせて。

長らく電車に揺られること、2時間弱。

テーマパークに着いた。

そこにはやはりカップルで溢れ返っていて。

とりあえず人が多い。

「絶対、手離すなよ。」

返事をして、ギュッと手を握る。

これは逸れたら、本当にやばい。

こんな人混みの中、探すのは無謀すぎる。

そして受付でチケットを渡して、中に入った。

まず一番に目に着いた乗り物に並んだ。

空飛ぶ象をイメージして作られたもので、象に乗って空中を回るというアトラクションだ。

順番を待っている間に、パンフレットを広げて、どういう風に回るかを考える。

乗り物もいいけど、ショーも見たい。

「どこか行きたいとこある?」

パンフレットを見せながら、問いかける。

「お前の好きなように回っていいよ。」

という何とも答えのない返答だった。

「せっかく来たんだから、ちゃんと一緒に考えてよ!」

「じゃあ、これとこれな。」

指差されたものを見てみると。
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