笑顔の裏側に
そしてクリスマス当日。

悠は午後から塾のバイトだ。

「ごめんな。せっかくのクリスマスなのに‥。」

「気にしないで。昨日一緒に過ごせたんだからいいの。」

ほんのちょっとだけ寂しいけど仕方がない。

受験生にクリスマスはないもの。

「少しでも早く帰れるように頑張るから。」

「うん。待ってる。」

最後まで名残惜しそうにする悠を笑顔で送り出した。

1人になった玄関はシーンとして寂しくなったけど、私は私でやることがあるのだ。

昨日のお礼に今日は私からのおもてなしとして、クリスマスの特別ディナーの準備をする。

さっさと準備に取り掛からなくては悠が帰ってくるまでに間に合わなくなってしまう。

頰を叩いて気合いを入れた。

ローストビーフのサラダにチキン。

サンドイッチにケーキ。

さすがにケーキは市販のだけど、あとは頑張って全部作るつもり。

サンドイッチは具材を3種類にしたので、少し時間はかかってしまったけど、何とか間に合った。

テーブルに並べて悠の帰りを待つ。

ガチャッと音がして、慌てて玄関に走った。

「おかえり。」

「ただいま。待たせたな。」

小さく首を振って、部屋に入るように促す。

早く作った料理を見てほしい。

「ちょっと待って、優美。」

先に行こうとする私を呼び止める。
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