笑顔の裏側に
振り返れば、大きな箱が差し出される。

「これ、お土産。」

「あ、ありがとう。」

渡されたものは、駅前のケーキ屋さんのケーキだった。

私が今日買ってきたものと同じお店だ。

「このお店のケーキ、好きじゃなかった?」

「え?あ、いや、そうじゃなくて。ごめん、ちょっとびっくりしちゃって。ありがとう。」

危ない。怪しまれるところだった。

必死に取り繕って、ケーキを受け取った。

「今、準備するから。着替えてきて。」

「おお!今日は豪華だな!急いで着替えてくる。」

悠が自室に入ったのを見届けて、肩の力を抜いた。

袋から出して箱を開けてみれば、たっぷりイチゴが乗った、小さなホールのイチゴケーキが顔を出した。

箱を閉めて、冷蔵庫にしまう。

とりあえず私の買ってきたケーキはなかったことにしよう。

そのケーキをどうするかはまたあとで考えればいい。

せっかく悠が買ってきてくれたんだから。

気を取り直して、準備をする。

シャンメリーを開けるというところで悠が戻ってきた。

栓抜きは悠に任せて、私はコップを準備する。

そして全ての準備が整って、席に着いた。

どの料理も美味いって食べてくれて。

すごく幸せだった。

悠のシャンメリーがなくなってきそうだったので、

「シャンメリー、もうないんだけど、お茶でいい?」

「あ、うん。ありがとう。」

特に気にした様子もなかったので、安心する。

今、悠に冷蔵庫を開けられたら困る。

何としてもそれだけは防がないと。
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