笑顔の裏側に
歩side

朝、職員室で仕事をしていると、電話が鳴った。

「はい。月島学園の瀬立です。」

「あ、瀬立先生でいらっしゃいますか?お世話になっております。麻生優美ですが、体調不良で今日はお休みさせていただきます。」

え…。麻生が休み?

珍しいな。

大丈夫なのか?

あの麻生が休むってことは相当悪いんだろうか。

「はい。承知致しました。お大事にしてください。失礼致します。」

電話を切ったあと、俺は昨日のことを思い出す。

昨日の三者面談のことの時はそんなに顔色は悪くなかった。

だけど本当は体調が悪かったのだろうか?

大丈夫かな。

ぼんやりしていると、学年の先生方から心配された。

朝礼に行っても1つだけ空いた席を見ると、何だか寂しかった。

授業中だって、みんなができなくても麻生はできた。

当てれば、しっかりと答えてくる。

でも今日はいないんだ。

そう思うとなぜか調子が狂う。

今日はスペルミスが多かった。

生徒に指摘されることもあった。

ダメだな。こんなんじゃ。

生徒が一人休みなだけなのに。

どうしてここまで心配なんだ。

受け持ってるクラスの一人だろ??

どうしてこんなに心が乱される?

しっかりしろ、俺。

そう思って午後からの授業に向けて気合を入れた。
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