笑顔の裏側に
寝る前に、あの時のように紅茶を飲みながら、ソファーで話していたとき。

「優美、やっぱりこないだの話、なかったことにしようか。」

先ほどまでの話と、一気に話題が変わり、固まってしまった。

「お母さん、少し急ぎすぎたのかも。まだ早かったかしらね。」

悲しげに紅茶を見つめるお母さんに胸が痛んだ。

お母さんにこんな顔をさせているのは、私が中途半端なせいだ。

「ごめんなさい。その、お母さんと暮らすのが嫌なんじゃなくてね。」

何とかしようと口を開くけど、取り繕ったような言葉しか出てこない。

「うん、分かってるよ。」

「後少しだけ待って。もう少しだけ。」

最終的には待っててというしかなかった。

それが時には残酷な言葉だと分かっていても。

次の日、起きた時にはお母さんはもういなかった。

テーブルにメモが置いてあり、手に取る。

¨昨日はごめんね。あなたの本心で答えを出してね。どんな答えでもお母さんたちは、いつでもここで待ってるから。¨

「ごめんなさい。」

誰にもいない部屋で、小さく呟いた声はやけに響いて。

まるで煮え切らない私を責めているようだった。

そのメモを握りしめて、悠とちゃんと話すともう一度決心した。

明日は土曜日だから、悠は実家に帰ってしまう。

今日はお互いにバイトもないし、ゆっくり話せるだろう。

頰を叩いて自分を奮い立たせて、私も大学へ向かった。
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