笑顔の裏側に
ひとしきり泣いた後、ドアを開ければ、リビングの電気は消えていた。

そっとリビングに行けば、悠はソファーで眠っていた。

スーツケースを見れば、もう折りたたまれて、隅の方に置いてある。

それを見て、悠の決意は固いのだと思った。

だけど私だって誤解されたままは嫌だ。

私には悠が必要で、これから先もそれはずっと変わらないのに。

自室から布団を運んで、悠にかけた。

ソファーの前に座る。

「悠‥好きだよ‥」

呟いた言葉に返事はなかった。

そしていつもの時間に悠が起きてきた。

おはようの挨拶もない。

ただ無言で自分のやるべきことをしていく。

朝ごはんはとてもじゃないけど食べられなかった。

先に食べ終わった悠を見て、私も立ち上がる。

「悠、考え直して。ちゃんと話をしよう?」

振り返った悠と今日初めて目が合った。

「頰、痛かったか?ごめんな‥。」

悠が私の頰に触れようとした時、無意識のうちに一歩下がってしまった。

悠の行き場をなくした手が宙を舞った。

相手は悠なのに、何で‥。

やってしまったと思っても、もう遅かった。
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