笑顔の裏側に
「ごめん、違うの!」

「やっぱり俺たち、一度距離を置こう。」

気まずい空気の中、吐き出された言葉は私の心を酷く抉った。

「え‥」

「近すぎたんだよ。だから一回リセットするためにも、離れたほうがいい。」

「何で‥何でそんなこと言うの?」

近すぎたって何?

何でリセットする必要があるの?

「何も別れるとは言ってない。別々の生活に戻るだけだ。」

悠の言葉が何一つ理解できない。

心が受け入れることを拒否している。

こんなこと、初めてだった。

呆然と立ち尽くす私を置いて、悠はスーツケースを持って玄関に行ってしまう。

我に返って、慌てて追いかければ、もうすでに靴を履いているところだった。

「悠、嫌だ。行かないでよ‥」

「自信がないんだ。」

ドアが開いた。

悠が行ってしまう。

「悠!」

「ごめん。」

静かに閉まったドアの音が玄関に木霊した。

ああ、行ってしまった。

私1人を残して。

もうこのドアが開けられることはないと思うと、しばらくそこから動けなかった。
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