笑顔の裏側に
しかしいくら待っても悠は店内に姿を現さなかった。

私が来たのを知って、あえて姿を現さなかったのか。

お客さんが居なくなった時を見計らって、席を移動し、マスターに近づいた。

「お久しぶりです、マスター。」

「ああ、優美ちゃん、久しぶりだね。今日は1人?」

その言葉に違和感を感じる。

いつもここで待たせてもらっていたのに、その言葉はおかしい。

悠のバイトのシフトが変わったのだろうか。

「あの、悠は‥」

「え?神谷なら、12月で終わりだったけど?」

12月って約1ヶ月も前だ。

越川先輩のことがあったからだろうか。

でも辞めないって約束したし、その後もバイトに行く様子があったのに。

「優美ちゃん、知らなかったんだ。」

マスターが驚いたように言う。

「どういうことですか?」

「もともとクリスマス前までっていう条件だったんだよ。」

じゃあ、新人が入るまでっていうのは嘘だったの?

もしかして友達のお兄さんから頼まれてっていうのも‥。

「あの、悠が自分でここで働きたいって面接に来たんですか?」

「そうだけど‥??」

私の質問の意図が分からないとでも言うように首を傾げる。

だけど私はそれについて説明できるほど、自分の中でも整理しきれてなかった。

だって悠の言っていたことが全部嘘だったなんて。

黙り込んでしまった私に察したのだろう。

私たちが上手くいっていないことに。
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