笑顔の裏側に
次の日から、私は部屋にあった悠の私物を元の位置に戻した。

今までは見えないところに仕舞い込んでいたけれど、それはやめにすることにした。

もう私にできることは、悠を待つことだけ。

ただあの頃と同じように、何も変わらずに悠の帰りを待つんだ。

いつでも悠が帰ってきてもいいように。

今まで悠にはたくさん待っててもらった。

だから今度は私が待つ番だ。

それからお母さんに連絡した。

もちろん、あの話を断るために。

悠の帰りを待つと決めた以上、私はここにいないといけない。

ちゃんとした状態で、悠を迎えたい。

そして2月に入ってすぐ、私は実家に帰った。

夜勤明けだというのに、快く迎えてくれた。

残念ながらお父さんは出張らしい。

近況報告しながら、いつ切り出そうか迷っていると、

「それで、どうすることにした?」

お母さんから振ってくれた。

「それを言いに来たんでしょ?」

やっぱり気づいてたんだ。

「あのね、お母さん。私、やっぱり戻れない。この家が嫌なわけじゃないの。ただマンションでの生活も大切なの。だからごめんなさい。」

正直に自分の気持ちを伝えた。

どうしても悠との生活をもう一度やり直したい。

だから今はあの部屋から離れるわけにはいかない。

あの部屋がなくなれば、きっと私たちはもう戻れない気がしたから。

頭を下げたまま、どうか伝わってほしいと願った。
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