笑顔の裏側に
それからもう何本目かも分からない電車が駅に到着してすぐ。

ずっと会いたいと待ち焦がれていた悠の姿が見えた。

改札を抜けると、真っ直ぐこっちに向かってくる。

「悪い、待たしたか。」

首を横にぶんぶん振って否定した。

喉が熱くなって声が出ない。

来てくれただけでも、こんなに嬉しいのに。

目が合った。

ちゃんと私を見てくれた。

私に向けて言葉を発してくれた。

そのことに感極まって、目頭が熱くなり、泣きそうになった。

慌てて瞳に力を入れて、目を合わせずに言う。

「移動しようか。」

先に背を向けて歩き出し、指先で涙を拭った。

構内から出ると、悠はすぐに隣に並んだ。

隣を歩いていいんだと言ってくれているようで、安心する。

「来てくれてありがとう。」

隣を見れば、真っ直ぐ前を向いていた。

無言のまま目的地に着いた。

インターフォンを押して、警備員の人に解除してもらった。

そのまま事務室で受付を済ませて、ある場所に向けて歩き出す。

「おい、勝手にいいのかよ。職員室に

「事前に許可は取ってあるから大丈夫。」

振り返ってそう言った後、再び歩き出した。

戸惑いながらも、私の後について来てくれる。

やってきた場所は私たちが中高と通った学校の中庭だ。

先約がいないことに安堵する。
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