笑顔の裏側に
「もういいよ。頭を上げろ。」

今まで黙っていた悠が口を開いた。

「俺も悪かった。お前の話を聞こうとしないで。それに俺はお前に‥」

言葉を詰まらせた悠は何かを堪えているようだった。

爪が食い込むほど、力強く握られた手が瞳に映る。

「ちょっとぶつかっただけでしょ。もう平気だよ。」

その手にそっと触れれば、悠はすぐに手を引っ込めた。

あの時、私は悠の伸ばした手を避けてしまった。

そのことが罪悪感を抱かせてしまったのだろう。

「でも俺はお前に恐怖を感じさせてしまった。沙織さんとのことがあって、そういうことに人一倍敏感で傷つきやすくなってるお前に俺はあんなこと‥」

心底後悔しているように、顔を苦痛で歪める。

そんな悠の手を今度は力強く包んだ。

「もう怖くないよ。だからそんな顔しないで‥」

「ごめん‥本当にごめん‥」

それでも辛そうな表情をする悠を思わず抱きしめていた。

「悠は何も悪くない。私が全部悪いの。私が悠を追い詰めてしまった。だからもう謝らないで。」

こんな風に思い詰めてしまうほど、私は悠を追い詰めてしまった。

誰にも言えずに1人で抱え込ませて。

そんな悠に私は気付かずに、ただそばにいてもらって。

甘えるだけ甘えて。
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