笑顔の裏側に
「俺が白木との関係を疑ったとき、優美は初めて俺が好きだと言った。すごく嬉しかった。」

悠が遠い目をしながらゆっくりと話し出す。

私はその横顔を見つめながら、耳を傾けた。

「だけどそれから俺はどんどん欲張りになって。俺が優美を好きな気持ちと同じくらい優美にも俺を好きになってほしい。そんな想いが日に日に強くなっていった。」

私は初めて悠に気持ちを伝えた日から、自分の気持ちをちゃんと言葉にしてきただろうか。

悠がずっと言葉にして伝えてきてくれたように。

きっと、ううん、絶対に足りなかった。

だから悠をこんなに不安にさせてしまったんだ。

「俺ばっかり好きなことに焦って、不安になり始めていた時、俺は熱を出した。その時優美は俺に言っただろ?何も返せないって‥」

記憶を辿って思い出すのは、バイト先の休憩室でのやりとりだ。

私の反対を押し切ってバイトに行ったこと、心配かけたことを謝る悠に私はそんなことを言ったような気がする。

いつもそばにいてくれる悠に私も何かしてあげたい。

あの時、強くそう思ったから。

「その時思ったんだ。優美は俺に恩義を感じているんだって‥」

そう言った後、悠は黙り込んでしまった。

持っていたオルゴールをもう一度ハンカチに包んで、鞄の上に置いた。

そして悠の手に自分の手を重ねる。

ゆっくりでいい。

悠のペースでいい。

そう伝えるように。
< 509 / 518 >

この作品をシェア

pagetop