笑顔の裏側に
「いつからだろうね。悠はいつも自分のことは後回しで私のことばっかり優先してくれるから。私は悠を一番考えて、私が悠自身を大切にしたいと思った。私が暗闇に飲み込まれそうになれば、手を差し伸べて、そこから引っ張りあげてくれる。いつだって私の心に寄り添って本当の声に耳を傾けてくれる。そんな風に私も、言葉にできない本当の心の声に気づいてあげたいと思うようになった。」

もしも悠が悲しみに暮れたとき、救いの手を差し伸べるのは私でありたい。

悠の表情や言葉から、本当の気持ちを感じ取れるようになりたい。

気づけばそんな強い想いが心の中に宿っていた。

「確かに私達は幼馴染で。過ごしてきた時間は恋人よりも遥かに長い。でもこれだけは自信を持って言える。私にとって、悠は大切な幼馴染で、愛する恋人で。かけがえのない存在なの。それはずっと変わらない。そして今話した気持ちや想いは、幼馴染としてでは決して味わえなかったものであるということ。悠の彼女になって、悠を好きになったからこそ、生まれた感情なんだよ。」

抑えられなくなった嗚咽が私の腕の中で漏れ始めた。

そっと肩を私の方に引き寄せれば、私の肩に顔を埋める。

私にしがみつく腕が。

小刻みに震える肩が。

いつだって強く優しくいてくれた悠だけど、本当はこんなにも脆くて儚いことを教えてくれる。

私が弱かった分まで悠は強くあろうとしてくれた。

だけどもういいんだよ。

1人で頑張りすぎないで、私を頼ってほしい。

私も悠を守れるくらい強くなってみせるから。

「悠、好きだよ。今もこれからずっと悠だけを愛してる。」

耳元で囁けば、嗚咽が大きくなり、首に回された腕に力が入った。

ただ悠が落ち着くまで私は背中を撫で続ける。

悠が私にそうしてくれたように。

この涙は流さなくていいはずだった。

私がちゃんと悠の不安な心に気づけていたら。

でも私の想いが伝わってるってことだよね?

少しでも悠に不安を和らげることができたなら。

その涙が私たちの想いを繋げ、絆を深めてくれた証になる。
< 513 / 518 >

この作品をシェア

pagetop