笑顔の裏側に
その手を今度は悠に差し出した。

「悠のは私がはめてあげる。」

オルゴールを持ったまま、固まる悠に小さく笑いながら言う。

「そのネックレスに通ってるうちの1つがそうなんでしょ?」

ハッとしたようにネックレスを押さえた。

参ったとでも言うように、苦笑しながらネックレスを外し、私に渡してくれる。

指輪に気づいたあの日。

手に取ってよく見てみると、内側にも文字が刻印されてあった。

それに気づいたとき、悠も同じものを持っているのだと確信した。

そこで思い出したのはネックレス。

普段アクセサリーをつけない悠がクリスマス以降、肌身離さずつけるようになった。

気になって聞いてみると、大切なものだからと言っていた。

その時はそのまま流してしまったけど。

それに気づいてからは、悠がネックレスをつけている間は、私のことをまだ好きでいてくれると安心できた。

今日、待ち合わせの駅に来てくれたときも。

チェーンには複数のリングが通っているけれど、その中から内側の文字を見つけて、チェーンから外す。

そして今私が悠にはめようとしている指輪には、¨Yumi¨の文字が刻まれている。

同じように悠の右手を取って、薬指にはめた。

顔を上げれば、悠と目が合って。

引かれ合うようにキスをした。

唇が離れて微笑めば、いつもの優しい微笑みが返ってきた。
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