笑顔の裏側に
歩side

今日は麻生との三者面談の日。

あの日以来、麻生とはほとんど話していない。

関わるなと言われた以上、あまりグイグイ言っても余計に心を閉ざしてしまうだけだろう。

そして俺は自分自身の気持ちにも戸惑っていた。

麻生がどうしようもなく心配で、ほっとけなくて。

それがいつしか俺が救いたい、守りたいという気持ちに変わり始めているのには自分でも薄々気づいていた。

麻生に生徒以上の感情を抱いているのは確かで。

でもそれはあいつと重ねているだけだと思っていた。

あの日までは。

あの日、麻生にどうして構うのかと聞かれた時、口が勝手に動いていた。

心配だと叫んで初めて自分の気持ちが分かった。

俺は麻生が好きなんだ---。

いつも一生懸命で頑張りすぎるところがあって。

何でもそつなくこなすように見えるけど、本当は苦しんでる。

いつも笑顔でいるけど、暗い影を落としていることも。

本当は辛いはずなのに、無理して強がっているところも。

すべてが愛おしい。

そばで支えたい。

そして守りたい。

そんな感情が俺の心には溢れていた。

でも俺はきっと麻生に嫌われている。

この気持ちを伝える日がくることはないだろう。

そう思って俺はその気持ちにそっと蓋をした。
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