笑顔の裏側に
結局、あれから特に関係も変わらないまま、2学期になってしまった。

夏休みは毎年、要と一緒に図書館で課題をやっていたのに、今年は1人で何だか寂しかった。

2人では丁度いい大きさだった机も1人では広すぎて。

教え合うことも、休憩がてらにこっそり雑談することもなかった。

要、お前も同じ気持ちでいてくれてる?

久しぶりに見た要はあの時とは変わらず光のない瞳だった。

声をかけても素っ気ない返事しか返って来ない。

それでも俺はめげずに何度も話しかけた。

もう一度要が笑えるように。

ずっとそう思ってやってきた。

だけど、そんな俺の想いは届かなかったんだ…。

あの日は確か、俺は先生に呼ばれていた。

だからすぐにはあいつのところには行けなかったんだ。

あの日、先生になんて呼ばれなかったら。

もう少し早く帰ってきていたら。

何度そう思っただろう。

何度後悔しただろう。

でも時間は戻ってはくれなくて。

俺はそのままあいつを失った。

先生との話が終わって教室に帰り、5限の準備をしていた時だった。

そして机の中に手を入れると何か紙のようなものが手に触れた。

何だろう。

そう思って取り出すと、綺麗な字で

"歩へ"

と書いてある。

これを見た瞬間、嫌な胸騒ぎがした。
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