笑顔の裏側に
とりあえず人がいなそうな体育館裏のベンチまでたどり着いた。

体育館裏に向かう間、重苦しい空気が漂っていた。

お互いに話さない。

無言のままベンチに腰をかけ、俺から話を切り出した。

「蒼は大丈夫か??」

「はい。何とかやってます。」

そう強がって言う蒼はとても痛々しかった。

「蒼。これからはもっと俺を頼れよ。」

蒼まで俺のそばからいなくなるんじゃないかと思ったら怖くて。

気づけばそう言葉にしていた。

「ありがとうございます。」

そう答える声は震えていて。

今にも泣きそうな顔で俺を見ている。

「どうして要があんなことしたのか、知ってるか??」

「分からないです。」

泣くのを必死に我慢して蒼は静かにそう答えた。

「ごめんな。辛いよな。泣きたい時は泣いていいんだよ。」

その言葉を待っていたかのように蒼は声を上げて泣き出した。

俺はそんな蒼の肩を抱いた。

蒼だってすごく辛かったよな。

たった一人の兄を突然失って。

みんなが憧れるほど本当に仲が良い兄弟だった。

弟思いの優しい兄と。

人懐っこくて兄が大好きな弟。

絶対に離れてはいけない2人だったのに。

どうして要は蒼や俺を置いていなくなっちゃったんだよ。

そう思うと胸が苦しくて。

蒼をそっと見守りながら、俺も静かに涙を流した。
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