笑顔の裏側に
「いいよ。場所を移そうか。」

いつもより優しく声をかけ、俺はあの日と同じ体育館裏のベンチまで蒼を連れて出した。

何かあっただろうか?

そんなことを考えながら、俺を頼ってくれたことを嬉しく思っていた。

この後、俺はとんでもない事実を聞かされることになるなんて思いもせずに…。

「蒼?どうした??」

ベンチに腰をかけてうつむいたまま、何も言わない蒼の顔を覗き込んで言った。

「歩さん、本当にすみませんでした。俺…、兄ちゃんが死んだ理由…、本当は知ってたんです。でも兄ちゃんとの約束だったから…。手紙にも…、誰にも言うなって書いてあったから…。言えなかったんです…。本当にごめんなさい…。」

涙を堪えながら必死に蒼はそう言った。

俺は蒼の肩を抱いてそっと慰める。

蒼があの時どうして苦しそうな顔で分からないと答えたか今気づいた。

俺は兄貴が死んで辛いだけかと思っていた。

でも違ったんだな。

お前はすべて知った上で、兄貴の死を受け入れようと頑張っていたんだな。

「いいんだよ、蒼…。蒼はただ兄ちゃんとの約束を守ろうとしただけなんだろう??だから気にするな。」

そう優しく声を掛けると少し泣き止んだ蒼が一生懸命伝えようとしてくれていた。
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