笑顔の裏側に
「ずっと誰にも言わないつもりでした。俺の心の中だけでとどめておこうって…。でもそれじゃ、兄ちゃんが報われない気がして…。兄ちゃんが歩さんたちと距離を置いたのも、あまり笑わなくなったのも全部俺と親のせいなんです。」

蒼のせい?

どういうことだよ。

要は蒼のことを本当に可愛がっていた。

それにお前は兄貴のことが大好きだっただろ?

それをあいつは喜んでいた。

蒼の話をする時はいつも嬉しそうだった。

それなのに要がお前のせいで死ぬわけないだろう?

「蒼?ちゃんと話してくれないか?」

「はい。」

蒼は意を決したように話し始めた。

蒼は途中何度もつっかえながら懸命に話してくれた。

涙ながら必死に言葉を紡いでいく蒼の姿を見ながら俺は涙をこらえられなかった。

俺が泣いちゃいけない。

苦しんでるのは蒼だ。

俺じゃない。

そう思っても何も気づけなかった自分が情けなくて。

悔しくて。

要が一人でそんなにたくさん抱え込んでいたなんて俺は全然知らなかった。
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