笑顔の裏側に
「そして、兄ちゃんは…俺のせいで…医者になることを…やめられなくなったんです。」

表情に暗い影を落としながら静かに蒼は言った。

「蒼、どういうことだよ？要は要。お前はお前だろ？？要は自分で医者になることやめなかった。まあ、やめられなかったのかもしれないけど、どうしてお前がそれに関係してんだよ？お前はいつだって兄貴の味方だったんだろ？だからこうして今俺に話してくれてるんじゃないのか？」

どうして自分を責めるんだよ。

ちゃんと兄貴のこと気にかけていたじゃないか。

全部事情を知っているからこそ、できることだってあっただろう？

「そうです。でも少なくとも…兄ちゃんからその機会を奪ったのは俺です。兄ちゃんは俺のために…。」

蒼は涙をこらえながら、悔しそうに表情をゆがめている。

頬に一筋の涙がつたると、それが合図だったかのように蒼は話し始めた。

「もちろん俺も親から医者になることを言われれきました。でも俺はずっと拒否してきた。俺は弁護士になりたくて。だけど病院の経営も悪くて、後継ぎも必要で…。その時兄ちゃんが言ったんです。『俺が絶対医者になる。だから蒼は弁護士になりな。』その言葉を聞いて親は渋々納得してくれました。だけどそれによって兄ちゃんは医者にならないといけなくなった。医者にならなければ、俺の夢を壊してしまう。だから…だから…兄ちゃんは…。」

そこまで話すと蒼は泣き崩れた。
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