笑顔の裏側に
歩side

俺は少しでも麻生を救うことができたのだろうか?

『先生、ありがとう…。』

そう言って少し微笑んだ麻生を見て安心した。

まだぎこちないけれど、笑わなくなってしまったわけじゃなかった。

良かった。

心が壊れる前で。

ホッとしたその時だった。

麻生の体重が俺の方へともたれかかってきたのだった。

「麻生?」

呼んでも返事がない。

そっと顔を上げると、頬はピンクに染まり、浅い呼吸を繰り返していた。

慌てて額に手を当てる。

やはり熱い。

抱きしめた時に少し暖かかったのも、目が充血していたのも、全部泣いてるからだと思っていた。

でも違った。

熱があったんだ。

いつからだろう?

顔色が悪かったのはそのせい??

そうだとすると、かなり無理させてしまった。

ごめんな。

俺がもっと早く気づいていたら…。
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