笑顔の裏側に
麻生の髪をそっと撫でる。

お前はいつも助けを求めずに一人で頑張っているのか?

ずっと誰にも弱さを見せずに生きてきたのか?

そう思うと胸が張り裂けそうだった。

すると麻生の頬に涙がつたった。

「麻生?」

呼びかけても返事はない。

あいつは夢の中まで苦しんでいるのか?

そっと涙を拭い、手を握る。

「ごめん…な…さい…。ごめ…んな…さい…」

そう呟いて涙を流している。

一体何がお前を苦しめてる??

俺は麻生を救うことはできないのか??

「お…かあ…さん…ごめん…な…さい…。」

最後にそう呟いて、涙は麻生の手を握る俺の手にこぼれ落ちた。

お前はずっとお母さんのことで傷ついているのか?

今日の言動を見れば、麻生とお母さんの間に何かあってもおかしくない。

それなら麻生が必死に隠しているのも納得がいく。

俺は今まで麻生が話してくれるように言ってきた。

だけど、それじゃダメだったんだな。

俺はちゃんと麻生が話してくれない理由を考えるべきだった。

腕の痣。

手の甲の傷。

腫れた頬。

何度も見てきた。

麻生だって俺に何かあることがバレてると分かってるはず。

それでも麻生は頑なに嘘をつき通そうとした。

それはどうしてなのだろうか?

そしてそれらの傷はどのように関係があるのだろう?

でもいくら考えても分からなかった。
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