笑顔の裏側に
俺がおにぎりを食べ終わった頃、タオルや洋服を持った麻生が戻ってきた。

「先生、もう遅いですし、泊まって行ってくださいね。これ、タオルと着替えです。よかったら使って下さい。」

「ありがとう。そうさせてもらうよ。」

もとから泊まるつもりだった。

熱のある麻生を一人にはできないし、俺も麻生のそばにいたかった。

お言葉に甘えて、さっと入浴を済ませ、リビングに戻る。

だけど麻生の姿はなかった。

今度はどこに行った?

安静にしてろって言ったのに。

家の中を歩き回るのは悪いと思ったが、少し心配になり、ドアを開けて探すがいない。

2階にいるのか?

階段を登ると電気がついている部屋が一つあった。

ドアをノックして呼びかけると、麻生が出てきた。

「早かったですね。この部屋、自由に使ってください。」

中に入って見ると、綺麗に布団が敷かれていた。

「麻生はどこで寝るんだ?」

「隣の自分の部屋で寝ますよ?」

一人で大丈夫かよ。
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