新選組〜猫みたいな君が好き〜



 帰りの道中、繋いだ手が暖かくて。



 これが人の温もりなんだって解った。




 私達とは逆に動く人混みを掻き分けて進む。



 少しでも気を抜いたら、手が離れそうで。



 頼りになるのがこの手だけだと思うと、どうしようもなく不安になった。



 私がキュッと手を握ると、平助も握り返してくれた。



 不安が軽くなり、安堵感に包まれる。




 その時…………




グイっ




 え?!




 私の肩が誰かに引っ張られた。



 私の進行方向と逆に引っ張られる肩の力は凄くて、手は呆気無く離れてしまう。



 最後に見たのは、私に手を伸ばす、平助の姿だった。









 平助っ!!




 私は後を向く暇もなく、路地裏へと引っ張られる。




 人混みから逃れられたと思った刹那、誰かの肩に抱きかかえられる。





 私を抱えた人は、浪士だった。





 浪士は私を担いだまま、更に奥へ奥へと進んでいく。





 怖い。




 刀を差した浪士に、何も持っていない私じゃ敵わない。





 必死で抵抗するも、手に力が入り、暴れるだけ無駄になってしまう。




 浪士が角を曲がるとそこには、四人の浪士がいた。





浪「おっ!やっときたか。」




 私は地面に落とされ、五人の浪士を見上げる形になる。





浪「中々の上玉だろ?だが…………まだ餓鬼だな。」




浪「何だってだっていい。やっちまおうぜ。」





 一人の浪士に、地面に押さえつけられる。




 口を押さえられ、息が苦しくなる。




 私は声が出ないから、助けも呼べない。





 結い紐がブチッと音を立ててちぎれる。




 浴衣の帯が解かれる。




 助けてっ………助けて平助!!




 目に涙を浮かべ、抵抗する私を簡単に押さえつけ、下衆に笑う浪士たち。





 恐怖を覚え、体が震える。






 やだっ!離してっ!!










平「てめぇら何やってんだーーーーーーー!!!!!」




ドカッ





浪「がっ!」




 

 そこに現れたのは、平助だった。




 息を切らし、近くにいた浪士を飛び蹴りする。





 吹っ飛んだ浪士を見て、浪士が刀を構える。





浪「てめぇ誰だ!」




平「新選組八番組組長、藤堂平助だ!!」




浪「何ぃ!新選組!!やっちまえ!」





 良かった……………




 助けに、きてくれた。





 平助は浪士たちを、峰打ちで次々と倒していく。




 半刻もかからず全員倒した平助は、すぐ私のところへかけよった。






 私の視界に、平助の涙で歪んだ瞳が写ったけど、すぐに温もりを感じた。





 まだ、怖くて立つことが出来ない私を、抱きしめてくれた。







 その安心感に、ホッとして。





 つい我慢していたものが溢れてしまった。





美「う…………っ…………うぁ…………ぇ……………」






 平助は更に私を強く抱きしめてくれる。




 暫く平助の腕の中で泣いていた。




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