新選組〜猫みたいな君が好き〜
気が付くと私は、白く広い空間に居た。
此処は………来たことがあるな。
多分、あの日だろう。
両者を殺された、あの日。
あの時はまだ小さくて、声ぐらいしか覚えていない。
?「猫継美夜。」
誰?!
後ろを振り向くと、見たことのあるような、ないような…………
私と同じ茶色の髪。
瞳の色。
何より…………美しい。
女の私が惚れてしまうぐらいに。
美「…………………誰?」
彼女はふっ、と表情を和らげる。
?「猫継本家一代目当主、猫継美咲菜(ネコツギミサナ)だ。」
美「本家一代目当主?!」
驚きを隠さずにはいられなかった。
だって、私のお父さんが三十九代目当主だったから…………
とっくのとっくに亡くなっている。
美咲菜様は頷く。
咲「お前に刑を言い渡したのは私だ。」
やっぱり。
この鈴を転がしたような綺麗な声は、覚えている。
ということは…………
咲「お前に刑を言い渡す。
………………………の前に、礼を言いたい。
東御孝之助。またの名を、猫継浩祐(ネコツギコウユウ)。
我が一族の恥晒しを消してくれて、感謝する。」
ホントに、猫継家の人だったんだ。
でも、恥晒しって…………
咲「浩祐は、自分の愛する人の為に、猫継家の法を破った。」
自分の愛する人の為に…………?
次々と疑問が私の頭に浮かぶ中、美咲菜様は説明を続ける。
咲「人間と交わり、人間に、猫継家の子を孕ませた。」
…………………!!!!
なにそれ。
そう思った時、口から言葉が出ていた。
美「それの何がいけないんですか!?」
咲「……………………」
美咲菜様は黙ってこちらを見ている。
どうやら、私の言い分を一通り聞いてくれるみたいで。
私の口は止まらない。
美「愛しあう事の何が、いけないんですか?!それを法で縛ってなんになるのですか?!」
咲「より濃い純血の猫又を後世に残すためだ。」
美「じゃあ東御の相手の方はどうなったんですか?!」
咲「殺した。」
……………………え?
殺したの?
そんなの…………酷すぎる。
さっきまでは鈴の様に聞こえた声が、今では凍った様に冷たい。
美「そんなので、幸せにはなれません!愛しあう事を許されないなんて、間違ってます!」
法で縛り付けたって、殺したって。
愛は続くんだ。
でも、幸せは続かない。
美咲菜様の顔が険しくなる。