青空の下月夜に舞う 3

くるっと体を反転させた男の人は、自分が蹴り倒した椅子に手をかける。


「あーあ。曲がっちまったよ。慶太郎、お前弁償な」

「何でだよ!」


笑いながら答える慶太郎に、


「どう考えてもお前のせいだろ」

「雅也さんが短気だからわりぃよ」

「わざとだろ。達悪」


二人の間にも和やかな空気が流れる。


椅子……壊れたし。
曲がってるって……普通曲がらないよ。何者だよ、雅也さん。

話の流れで、この人がみんなの口から度々出てくる雅也さんだって分かったけど。

第一印象は、爽やかな人。
第一行動は、怖い人。


壊れた椅子を端に寄せた雅也さんは、ずっと立ち尽くしたままだった私に、カウンターに座るよう促してくれ、どぎまぎしながらも、椅子に腰かけた。
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