【6】シンボルツリー
「今朝、美月ちゃん、嬉しそうでしたね。お父さんに連れられて、とっても」

「いつもあんな風だと、思っていました」

「お母さんに連れてきて貰う時と、喜び方が全然違いますよ」

「そうなんですか」

 私は再び、はしゃぐ美月の様子を伺った。一緒に遊んでいる女の子が、この母親の娘、山波さくらだった。母親は私と同じ方向を、目で追っていた。


「妹さんですか?」

「いえ、弟なんです」

「すみません」

「美月ちゃんにご兄弟は?」

「まだ、いないんです」

「やだ、変なこと聞いちゃいましたよね」

「いえ。でも、兄弟がいると、やはり楽しいですよね?」

「子供は喜びますよ。遊び相手がいて。美月ちゃんなら、世話好きで下の子の手が掛からないかも知れませんね」

「そうですね。美月は私の世話をよく焼いてくれるんですよ」

 事実、お医者さんごっこや、私が赤ちゃんの役になることが多かった。

 私が体を壊した時にも、常に、「おとうさん、だいじょうぶ?」「げんき、なった?」と気に掛けてくれる。


「小さいのに、お父さんが本当に好きなんですね」







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