君までの距離

「突き飛ばされて車道まで出てきてる。撮影で道路を封鎖していなかったら、危なかったよ」


アタシがぼんやりしているのを、戸惑っているかと取ったようで、背中を見遣る。

「どこにでもファンはいるけど、酷い目にあったね」

言われて見れば、ストッキングは破れて膝から血が出ていたし、服もよれて汚れていた。かろうじて肩から下がっているショップバックも破れて中身がのぞいていた。


あまりにも酷い自分の姿に、かあっと頬に血がのぼってくる。


「…ごめんなさい」

「なんで謝るの。あなたは何も悪くないでしょ。もしかして緊張してる?」


緊張しないわけない!

こんなイケメンに見上げられて、靴を履かせてもらうなんて、アタシの人生に一度だってなかった!

緊張しない人なんていないと思う。

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