君までの距離
「湯山さん同僚の渡辺です。渡辺、ご挨拶をして」
「はじめまして渡辺です。今日は見学させていただきますが、よろしくお願いします」
「あらいいのよ。こちらこそよろしくね。白蓉堂の湯山です」
にっこりと業界スマイルだ。眩しいくらい綺麗っ。
ゆるふわな髪はきちんとカットに行った計算された形だし、羽織っている鮮やかなオレンジのシャツも見るからに上質なもの。首に巻かれたストールでさえ繊細な織物だった。
まじまじと観察してしまったけれど、間近で足元まで見るのは失礼だと我慢する。
「ほら湯山さんに圧倒されて固まってますよ。普通の人間じゃ湯山さんと渡り合うなんて無理ですからね」